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- 2019.06.15 Saturday
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大原美術館正面玄関脇のロダン「カレーの市民」
西日本の豪雨は大変な事態をもたらしてしまいました。倉敷市の大原美術館はコレクションを守るために万全の備えで臨んだと聞きましたが、日本の社会は自然災害への意識を大きく変えなければ人の命も財産も守れない、そんな時代に入ってしまったのだと強く思います。タイムラインを設けて明るいうちから準備しておかないと、夜中の豪雨の中で避難しろと言われても動くことなどできません。それは老人に限ったことではありません。私も経験がありますが、警報や指示などは凄まじい雨音に搔き消されて聞き取れません。犠牲になられた方々のご無念、ご家族のみなさまのご心中は察するに余りあります。
被災されたみなさまが一日も早く平常の生活に戻られますことを心からお祈りいたします。
先週後半、その豪雨に見舞われた倉敷にある大原美術館や徳島の大塚国際美術館などをツアーしてきました(毎日新聞旅行主催)。
半年も前から予定して楽しみにしてくださったツアーですが、被災地の近くを観光することに躊躇された参加者もおられたことでしょう。私も複雑な思いがありましたが、被災された真備地区と同じ市内とは思えないほど穏やかな倉敷の美観地区には観光客の姿がほとんど見られず(無理からぬことでしょう)、「閑散期よりひどい状況」と地元の方が口々に嘆かれる状況に直面して、申し訳ないという思いと、お邪魔してよかったという思いが交互にわいてきました。ボランティアに入られた方々には本当に頭が下がりますが、観光地を訪問することも支援につながるかもしれません。この夏に瀬戸内の旅を検討しておられる方はご予定の変更前に今一度再考いただけたら幸いです。
倉敷、直島とまわり、旅の最終日は大塚国際美術館を半日巡りました。
ここの大きな魅力はシスティーナ礼拝堂やエルグレコの祭壇衝立の再現などに代表される環境展示ですが、こんな風景も魅力です。
いずれもヴィーナス。 左がジョルジョーネ、右がティツィアーノ
ジョルジョーネの<眠れるヴィーナス>は、ドレスデンのアルテ・マイスター絵画館所蔵。 ティツィアーノの<ウルヴィーノのヴィーナス>はフィレンツェのウフィツィ美術館にあります。この二人のヴィーナスを並べて眺められるなんて、この美術館ならでは。ちなみに、左の作品を制作中にジョルジョーネが亡くなったので、ティツィアーノが背景などを加筆して完成させたと言われています。ティツィアーノはジョルジョーネの作品にどんな刺激を受けたのでしょうね!
<快楽の園> ヒエロニムス・ボス
続いては、プラド美術館の傑作、ボスの<快楽の園>です。でも、あれれ? 扉が閉まっている!
そう、これは本家のプラドでも見ることのできない、祭壇画が閉じられた状態なのです。
一定の時間が経つと、こうして、ギギーと扉が開き
まず中央の快楽のさまが現れ
3幅の祭壇画となって全容が出現するというわけです。
これ、気づかずに通り過ぎる方が多いようなので、ぜひチェックしていただきたいです。
扉を閉じた時の、モノトーンの球体の存在感(天地創造のさまを表すともいわれています)にはちょっとゾクゾクっとします。
そのほか、受胎告知の違いを見比べるのも面白く、その調子で一点一点見続けるうちに、ルネサンスとバロックのフロアだけで2時間近く掛かかりました。「2時間でめぐるヨーロッパの美術館旅」というところでしょうか。
秋のアートツアーも、またこちらでご案内させていただきます! お楽しみに♪
追伸:8月の毎日新聞旅行のアートツアーはこちらをどうぞ!